犬猫さんの健康を守る!寄生虫予防③
2023/11/17
ご家族である犬猫さんが元気に生き生きとその子らしく暮らせる時間を長くしていくために、最も重要なのは予防医療です。近年ではヒトの医療で病気になってから治療するよりも病気にならないことを目指した医学が広く知られるようになってきていますが、予防医療の方が体の負担も費用の負担も小さくなる点は犬猫さんも同じです。今回は予防医療の中でも寄生虫対策③というテーマでまとめていますので、この内容を普段の生活に活かしていただけると幸いです。
目次
まず寄生虫とは?
寄生というのはある生き物が他の生き物に対して一方的に害を与えながら生きている状態のことを指しています。犬猫さんに寄生する虫は多くいますが、大きく分けると皮膚や毛のような体の表面につく外部寄生虫と胃腸や血管のような体の中に入り込んでくる内部寄生虫に分類することができます。今回の③ではこの中でも血管に住み着く犬糸状虫について解説していきます。
犬糸状虫とは前述のとおり血に紛れ込んで血管の中に住み着いている虫です。別名をフィラリアといって犬猫さんと一緒に暮らしている方なら皆さん意識されている寄生虫だと思います。これに感染してしまうと心臓に大きな負担がかかったり、血管に虫が詰まってしまったり命に係わる危険な状態を作り出すので、健康長寿のためには対策が必要です。
犬糸状虫症とは?
犬糸状虫症とは、血液の中に犬糸状虫が住み着いている状態のことを指しています。この寄生虫は、感染している犬猫さんの血を吸った蚊が感染していない犬猫さんの血を吸うことによって移ります。犬糸状虫という名前ですが猫さんにも感染することがあり、ヒトには感染しません。
感染してしまった場合でも、はじめは症状がありません。血液の中で小さい幼虫が少しずつ成長していく段階だからです。この幼虫が成虫になると心臓の直前の太い血管にへばりつきます。ここで血液の栄養を吸いながらオスとメスによって数を増やしていきます。成虫が住み着くと心臓に入る血流が乱れたり、増えた成虫が心臓の中に入り込んでいくことによって心臓弁膜症という病気を引き起こします。この心臓の中で寄生虫が増えてきた段階で心臓病という形の症状が出始めます。さらに症状が重度に進行すると、血液の成分が寄生虫によって壊されて赤いおしっこが出たり、心臓が全身に血液を送り出すことができなくなったりします。
もしもかかってしまったら?
感染が極めて初期の状態であれば、お薬を使うことによって犬猫さんに負担になることなく寄生虫を除去することができます。体の中に犬糸状虫の成虫が存在している場合にはその程度によってどんな処置をするのかが変わってきます。成虫の数がごく少数であれば、これ以上増えないようなお薬を使いながら虫がいなくなるのを待つこともあり得ます。成虫の数がかなり多くなってしまっている場合には、手術によって心臓から寄生虫を引っ張り出すという場合が多いです。症状が進行していれば、犬猫さんの体の負担も大きくなりますし治療の成功率も低くなります。
病気にならないことが一番です
犬猫さんが蚊に刺されなければ、犬糸状虫症にはなりません。蚊や輸血などを介して流れている血液に対して直接犬糸状虫の幼虫が接触しなければ移ることはありません。例えば仮に、この寄生虫に感染している犬猫さんの血液を少し舐めてしまったとしてもそれによって感染することは極めてまれです。しかしながら絶対に蚊に刺されないことは現実問題として非常に困難です。そこで犬猫さんの健康長寿のために皆さんにしていただいているのが月に1回の投薬です。この投薬を毎月していただいている間は、蚊などを介して犬糸状虫の幼虫が血の中に入ってきてもそこで定着することができずに除去されます。
なぜ今?
多くの動物病院さんでは5月頃にこの犬糸状虫の予防を勧めていると思います。蚊によって感染が広がる病気なので蚊が飛び始める5月から予防を行うのが合理的だからです。ではなぜ11月にこんな話しをしているのかというといつまでやるのが良いのかという話しは、いつからやるのかと比べて圧倒的に少ないからです。
東京都が毎年公表しているデータの中に、蚊がいつから飛び始めていつまで飛んでいたのかという調査があります。(※1)これは23区内にある代々木公園など9か所の公園で行われている調査なのですが、これによると2022年は4月28日から飛び始めて11月21日まで飛んでいたとされています。例年5月の上旬から飛び始めて11月の下旬まで飛んでいることが多いです。
この犬糸状虫の予防薬は、前述のように幼虫の定着を阻止する効果があります。ですから蚊が飛び始めたら飲み始めて、蚊がいなくなってから最後の1回をして止めることをお勧めしております。途中で止めてしまうと、その後に蚊に刺された場合幼虫が来年の5月までの間に体の中で成長してしまうので、11月下旬のこの時期に今年最後の1回を行っていただきたいのです。
かかりつけの病院にご相談ください
犬糸状虫に対するお薬はいくつか種類があるので、違いを知りたいなどの疑問点はいつでもご相談ください。
大田区にあるBe犬猫病院は、大切なご家族である犬猫さんが1日でも長く健康でい続けられるように、いろいろな角度から日々の生活をサポートしております。犬糸状虫症に限らず、ワクチンなどすべての犬猫さんにお勧めすることほど最新の知見を丁寧に説明していく必要があると考えておりますので、分からなくなってしまったことは何度でもお尋ねください。また、急にごはんを食べなくなった、吐いてしまった、なんだか元気がない等の症状があるときにもいつでも安心していただけるように休診日は設けておりません。予約がなくても診察いたします。救急の場合には夜間の時間外診療にも対応しておりますのでご相談ください。
※1 https://www.hokeniryo.metro.tokyo.lg.jp/kankyo/eisei/baikaikataisaku/mosquito_measures.html